ヨハン・セバスティアン・バッハ:カンタータ第147番「心と言葉と行為と生命をもって」(主よ人の望みの喜びよ)

Gospel in Classical

Bach

バッハ」という名前にどのようなイメージをもたれるだろうか?
宗教曲の作曲が華やかなりしころ、数百の教会音楽を生み出した、モーツァルトやベートーヴェン以前のバロック音楽の代表格である。また一般的に“音楽の父”というニックネームでも知られている。そんなイメージがつきまとう。
父というからには音楽を生み出した人間なのだろうか、などという疑問もわいてくる。バッハ以前にも重要な作曲家はいたのであって、何もバッハが音楽を考え出したわけではない。しかし、それまでの作曲家がメロディーの流麗さや和音の美しさを競っていたとすれば、そこに対位法、フーガといった高い技術を最初に盛り込んだのがバッハであった。
“音楽の父”といわれるほど音楽に定義と主体性を与えた人物であり、“ドイツの3大B”の一人に数えられるほど音楽の中心地ドイツを代表する作曲家となっているのがバッハである。これまでも、そしてこれからもバッハは音楽界の中心に据えられることは間違いなく、またそのおかげでドイツが音楽の中心地であり続けることも間違いない。
さて、そのバッハの音楽の中で、一番聴きやすくしかもズシッと重みのあるドイツ的な曲(ジャンル)は何かという質問が多いそうである。いろいろな意見があるだろうが、そうおっしゃる方には筆者はまずカンタータをおすすめしたい。カンタータとは簡単にいえば、コーラス・ソロ・オーケストラを使った教会音楽である。現在、演奏可能なバッハのカンタータは 200曲にのぼる。それぞれの曲に工夫が凝らされていて、同じ曲を繰り返し聴いてもまったくあきがこないし、一曲を聴くとまた次が聴きたくなる。それにほとんどの曲が30分前後と手ごろな長さである。このような理由からバッハの真髄を手軽に味わえるのはカンタータに尽きると思うのである。
その数多いカンタータの中で特におすすめしたいのが 第147番「心と言葉と行為と生命をもって」である。この曲こそバッハが精魂込めた一曲ではないかと思われるほど重厚かつ信仰的なもので、同時にそこに使われるメロディーは実に情緒豊かである。この曲を聴いて感動しない人はまずいない。とりわけ日本人には親しみやすいのではないだろうか。というのもこの曲の中の第6曲目と第10曲目に聴かれるのが、かの有名な「主よ、人の望みの喜びよ」なのである(現在では携帯電話の着信メロディーとしてもおなじみ)。これをそれぞれ第1部と第2部の終曲として配置し、この地上においていかに逆境に置かれようとも「心と言葉と行為と生命をもって」キリストを信じて恥じない信仰を非常に効果的に歌い上げている。
この曲は、バッハを初めて聴く方にはまず最初に、普段からバッハを聴いている方には繰り返し、と推す一曲である。バッハの信仰、偉大さ、そして普遍性を感じていただけるに違いない。

おすすめCD

カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団

リヒターは生前、世界一のバッハ演奏家として知られていた。彼の演奏はただ単にバッハをうまく弾くとか正統的に演奏するというものでなく、常にバッハの時代にまで立ち返り、その演奏様式を研究し、また音の強弱からコーラスの歌わせ方、末はアゴーギグ(音符の長さの揺れ動き)のかけかたといったところまで微妙なニュアンスを描き出す演奏家だった。
この147番でも「主よ…」を重点的に聴くのもいいが、第1部の何となく暗い雰囲気から第2部への真の喜びに到達する盛り上げ方に耳を傾けていただきたい。バッハの巧みな音楽をリヒターがこれまたうまく色づけしている。

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カール・ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽
クリストファー・ホグウッド指揮 エンシェント室内管弦楽団


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