ジューダス “Judas” LADY GAGA

lady_gaga_judas Gospel in Rock

ボーン・ディス・ウェイ (スペシャル・エディション(2CD))

前回のBorn This Wayに引き続きLady Gagaを取り上げる。
Born This Wayよりもさらに聖書からの引用と思われる箇所が多くなっている。

まずはタイトルのジューダスから。日本語のタイトルは「ジューダス」と英語の「Judas」をそのままカタカナにしているが、日本で使われている聖書では「ユダ」であり、聖書以外の文学、絵画などで登場する場合も「ユダ」が一般的。
なぜ「ユダ」と呼ばれるのかは、新約聖書はもともとギリシャ語で書かれているので日本語ではその発音にそったものになっているからである。この曲に登場する「ユダ」は正確には「イスカリオテのユダ “Judas Iscariot”」のこと。

さて、ユダはイエス・キリストを裏切リ、そのことによりイエスが十字架に架けられることになったので一般的には大悪人と思われているし、この「ジューダス」の中でも「悪魔」扱い。しかし、果たしてそうだろうか?ユダについての唯一の記録「聖書」の中で彼に関する箇所を引用してみよう。(引用は新共同訳聖書、数字は章:節)

マタイによる福音書
26:14 そのとき、十二人の一人で、イスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行き、
26:15 「あの男をあなたたちに引き渡せば、幾らくれますか」と言った。そこで、彼らは銀貨三十枚を支払うことにした。
26:16 そのときから、ユダはイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。26:17 除酵祭の第一日に、弟子たちがイエスのところに来て、「どこに、過越の食事をなさる用意をいたしましょうか」と言った。
26:18 イエスは言われた。「都のあの人のところに行ってこう言いなさい。『先生が、「わたしの時が近づいた。お宅で弟子たちと一緒に過越の食事をする」と言っています。』」
26:19 弟子たちは、イエスに命じられたとおりにして、過越の食事を準備した。
26:20 夕方になると、イエスは十二人と一緒に食事の席に着かれた。
26:21 一同が食事をしているとき、イエスは言われた。「はっきり言っておくが、あなたがたのうちの一人がわたしを裏切ろうとしている。」
26:22 弟子たちは非常に心を痛めて、「主よ、まさかわたしのことでは」と代わる代わる言い始めた。
26:23 イエスはお答えになった。「わたしと一緒に手で鉢に食べ物を浸した者が、わたしを裏切る。
26:24 人の子は、聖書に書いてあるとおりに、去って行く。だが、人の子を裏切るその者は不幸だ。生まれなかった方が、その者のためによかった。」
26:25 イエスを裏切ろうとしていたユダが口をはさんで、「先生、まさかわたしのことでは」と言うと、イエスは言われた。「それはあなたの言ったことだ。」

■引用した最初の節で「十二人」 といっているのはイエスの「使徒」12人のことで、このことから「イスカリオテのユダ」が使徒の一人であるということがわかる。また共感福音書のヨハネによる福音書では、「イスカリオテのシモンの子ユダ」となっている。15節以降からユダの裏切りとそれを預言したイエスの言葉が記述されている。

26:47 イエスがまだ話しておられると、十二人の一人であるユダがやって来た。祭司長たちや民の長老たちの遣わした大勢の群衆も、剣や棒を持って一緒に来た。
26:48 イエスを裏切ろうとしていたユダは、「わたしが接吻するのが、その人だ。それを捕まえろ」と、前もって合図を決めていた。
26:49 ユダはすぐイエスに近寄り、「先生、こんばんは」と言って接吻した。

■この場面はイエスを捕まえにきた人々に誰がイエスかということを知らせるためにユダがキスをするところ。

27:3 そのころ、イエスを裏切ったユダは、イエスに有罪の判決が下ったのを知って後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちや長老たちに返そうとして、
27:4 「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言った。しかし彼らは、「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言った。
27:5 そこで、ユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだ。

使徒言行録
1:16 「兄弟たち、イエスを捕らえた者たちの手引きをしたあのユダについては、聖霊がダビデの口を通して預言しています。この聖書の言葉は、実現しなければならなかったのです。
1:17 ユダはわたしたちの仲間の一人であり、同じ任務を割り当てられていました。
1:18 ところで、このユダは不正を働いて得た報酬で土地を買ったのですが、その地面にまっさかさまに落ちて、体が真ん中から裂け、はらわたがみな出てしまいました。

■イエスを捕らえられた後、ユダがどうなったのかが書かれているところ。マタイによる福音書では「首をつって死んだ」となっているが、 使徒言行録では、より恐ろしい表現になっている。

ユダに関する聖書に書かれている一連のストーリーは以上だが、重要なのは

1:16 「兄弟たち、イエスを捕らえた者たちの手引きをしたあのユダについては、聖霊がダビデの口を通して預言しています。この聖書の言葉は、実現しなければならなかったのです。

「26:24 人の子は、聖書に書いてあるとおりに、去って行く。」

また、先に引用した箇所以外にも裏切りを預言したところがある。

ヨハネによる福音書
13:18 わたしは、あなたがた皆について、こう言っているのではない。わたしは、どのような人々を選び出したか分かっている。しかし、『わたしのパンを食べている者が、わたしに逆らった』という聖書の言葉は実現しなければならない。

と書かれているように実はこの裏切りはイエスが生まれる前から聖書(旧約)に書かれていたということである。実際に旧約に書かれているのは下記が代表的である。

エレミヤ書
3:11 主はわたしに言われる。裏切りの女ユダに比べれば、背信の女イスラエルは正しかった。(注:ここでの「ユダ」はイスカリオテのユダの「Judas」でなく「Judah」)
ゼカリヤ書
11:13 主はわたしに言われた。「それを鋳物師に投げ与えよ。わたしが彼らによって値をつけられた見事な金額を。」わたしはその銀三十シェケルを取って、主の神殿で鋳物師に投げ与えた。
詩編
41:10 わたしの信頼していた仲間/わたしのパンを食べる者が/威張ってわたしを足げにします。

このように、旧約によって預言されていたことが成就さるために「ユダ」は必要だったわけで、単に強欲な弟子がイエスを裏切ったということではない。またごく最近発見された、「ユダの福音書」(リンク先参照)ではユダは裏切りによって他の弟子たちを超える存在になると記されているようだ。

というわけで、「ユダ」= 悪者 という単純なものではない。

次に「ジューダス」の中でユダ以外に聖書からの引用があるので少し紹介する。

(歌詞はLady Gagaオフィシャルサイトから転載)

Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Juda-ah-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Ga-ah ga-ah

Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Juda-ah-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Ga-ah ga-ah

When he calls to me, I am ready
I’ll wash his feet with my hair if he needs

Luke 7:38(ルカによる福音書78節)
and stood behind Jesus at his feet, crying. She began to wash his feet with her tears, and she dried them with her hair, kissing them many times and rubbing them with the perfume.
7:38 後ろからイエスの足もとに近寄り、泣きながらその足を涙でぬらし始め、自分の髪の毛でぬぐい、イエスの足に接吻して香油を塗った。

Forgive him when his tongue lies through his brain
Even after three times he betrays me

※Matthew 26(マタイによる福音書26章)
33 Peter said, “Everyone else may stumble in their faith because of you, but I will not.”
34 Jesus said, “I tell you the truth, tonight before the rooster crows you will say three times that you don’t know me.”
35 But Peter said, “I will never say that I don’t know you! I will even die with you!” And all the other followers said the same thing.
33 するとペトロが、「たとえ、みんながあなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」と言った。
34 イエスは言われた。「はっきり言っておく。あなたは今夜、鶏が鳴く前に、三度わたしのことを知らないと言うだろう。」
35 ペトロは、「たとえ、御一緒に死なねばならなくなっても、あなたのことを知らないなどとは決して申しません」と言った。弟子たちも皆、同じように言った。

イエスが捕らえられたとき弟子たちが、「イエスのことは知らない」と嘘をつくことを預言したイエスに対して弟子の一人のペテロが「あなたのことを知らないなどとは決して申しません」と言ったのにイエス言葉の通り、ペトロは3回嘘をつくことになってしまったのである。

Ah oh I’ll bring him down, bring him down, down
Ah oh a king with no crown, king with no crown

I’m just a holy fool,
Oh baby it’s so cruel but
I’m still in love with Judas baby
I’m just a Holy Fool, oh baby it’s so cruel
But I’m still in love with Judas baby

Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Juda-ah-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Ga-ah ga-ah

I couldn’t love a man so purely
Even darkness forgave his goofy way
I’ve learned love is like a brick you can
Build a house or sink a dead body

Ah oh I’ll bring him down, bring him down, down
Ah oh a king with no crown, king with no crown

I’m just a holy fool, oh baby it’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
I’m just a holy fool, oh baby it’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as

In the most Biblical sense,
I am beyond repentance
Fame hooker, prostitute wench, vomits her mind
But in the cultural sense
I just speak in future tense
Judas kiss me if offenced,
Or wear an ear condom next time

I wanna love you, but something’s pulling me away from you
Jesus is my virtue and Judas is the demon I cling to I cling to

Just a holy fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
I’m just a holy fool, oh baby it’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby

Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Whoa whoa I’m in love with Juda-as, Juda-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Juda-ah-as
Juda-as! Juda-ah-as! Judas! Ga-ah ga-ah

他の箇所についても聖書からの引用と思われるところはあるが、明らかに聖書からの引用であると思えるところについて書いた。

最後に「イスカリオテのユダ」以外の「ユダ」について、簡単に紹介しておく。

・創世記に登場する「ユダ」:日本語表記では「イスカリオテのユダ」と同じ「ユダ」だが、英語では「Judah」。イエスの先祖の一人。
・イエスの兄弟のユダ(マタイによる福音書13章55節)
・使徒の一人であるヤコブの子ユダ(ルカによる福音書6章16節)
・バルサバと呼ばれるユダ(使徒言行録15章22節)

以上

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