ピープル・ゲット・レディ “People Get Ready” Jeff Beck

People Get Ready Gospel in Rock

3大ギタリストの1人、ジェフ・ベックを取り上げる。3大ギタリスト以外にもギター・ヒーローと呼ばれるギタリストはロック界には数多くいる。この3人をはるかに凌駕するまさに超人的なテクニックを持つイングウエイ・マルムスティーニのようなギタリストも存在する。しかしヴォーカルもないギターだけの魅力で1枚のアルバムを作りヒットチャートに送り込めるアーティストはベック以外にはいない。現在も彼の姿勢は崩れる事無くギターが全面に出た曲を作り続けている。ところが、ここで紹介する「ピープル・ゲット・レディ」を収めたアルバム「フラッシュ」はベックのアルバムの中ではかなり異色である。プロデュースは当時、マドンナの一連の作品を手がけたことで知られるナイル・ロジャースやアーサー・ベーカーを起用し従来のギター・ヒーロー的なアルバムとは一線を画している。殆どの曲にヴォーカルが入っているというのもベックのアルバムとしてはこれ以外にない。もちろんそれまでのインストルメントアルバムの流れにある旧友ヤン・ハマーと共演した曲もあるが数曲しかない。全体としてはポップな印象が勝ってしまうのは否めないが、個人的にはベックのアルバムの中で一番好きなアルバムである。営業的にも好成績を残したがベック自身は後年「ゴミ」扱いにして記憶から消してしまいたいようだ。このアルバムの発表後はまた元の路線に戻している。

さて、「ピープル・ゲット・レディ」に話を移すと原曲はソウルグループのカーティス・メイフィールド率いるインプレッションズのヒット曲である。ヴォーカルはジェフ・ベック・グループ時代からの旧友、ロッド・スチュアート。カーティス・メイフィールドに劣らぬ熱唱を聞かせるロッドのヴォーカルに埋没することなく自己主張をみせるベックのギターが絶妙に絡んだ傑作である。ベックの人間味溢れるギターのイントロから始まり、ゆっくりとした曲調が徐々に盛り上がる。最後は西部劇のワンシーンの中に自分が入りこんでしまっている。何も無くてもいい。ただ神への感謝を忘れなければ・・・・。疲れた時、癒されたいときに聴きたい曲だ。

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