キリエ “Kyrie” MR.MISTER

Gospel in Rock

Mr.Mister

今でも幾度となくCMで使われている「キリエ」だが、「キリエ」と聞いて何を思い浮かべられただろうか。日本人が歌っているとしたら大方 の人は女性の名前だと思われたかもしれない。しかし Mr.ミスターは、アメリカのバンド であり、東洋趣味で「キリエ」とつけたのでもない。それでは、地名か?それも違う。実 はKyrie は、ギリシャ語であり「主へのよびかけ」を表すカトリック教会のミサの前半部(ことばの典礼)の前に歌われる「あわれみの賛歌」のことだ。ミサはこの「あわれみの賛 歌」以下、次の順で歌われる。

1. Kyrie あわれみの賛歌
2. Gloria 栄光の賛歌
3. Credo 信仰宣言
4. Sanctus 感謝の賛歌 I
5. Benedictus 感謝の賛歌 II
6. Agnus Dei 平和の賛歌

これらは、当コラムを熱心にご覧になった方はどこかでみたことに気付かれるはずである。
その通り。牧 洋一氏が Gospel in Classicalで紹介したベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」の曲構成である。すなわち「「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」はミサの時に使われる曲なのである。ミサの進め方、形式、意味ななどについては省略するが「Kyrie」についてもう少し詳しく述べよう。賛歌としては「Kyrie」でもよいのだが連祷(れんとう:祈り)に用いられるときは「キリエ エレイソン(kyrie eleison)」と発せられる。「主よ、あわれみたまえ」(マタイ20:30、31)の意味である。その部分を「新共同訳聖書」から引用すると

20:29 一行がエリコの町を出ると、大勢の群衆がイエスに従った。
20:30 そのとき、二人の盲人が道端に座っていたが、イエスがお通りと聞いて、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。
20:31 群衆は叱りつけて黙らせようとしたが、二人はますます、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。
20:32 イエスは立ち止まり、二人を呼んで、「何をしてほしいのか」と言われた。
20:33 二人は、「主よ、目を開けていただきたいのです」と言った。
20:34 イエスが深く憐れんで、その目に触れられると、盲人たちはすぐ見えるようになり、イエスに従った。

この「憐れんでください」はこの章だけでなく、マタイ9:27、15:27マルコ9:22、第2テモテ1:16などなどイエスに呼びかけるときに使われる。「アーメン」とならんでカトリックでは重要な言葉である。

さて、改めてこの「キリエ」であるが84年にデビューしたMr.ミスターの大ヒット曲で86年3月1日、8日の2週にわたって連続全米No.1になった。曲調は当時流行したトト、スティックス等と同様のアメリカンプログレハードといってよいだろう。個々の技量も素晴らしいがシンセサイザーなどの電子楽器をふんだんに使ったエレクトロポップでもある。

全体を通してkyrie eleisonが、もちろんこの曲の主題となっている。何かトラブルにあった人が立ち直るために神に祈りを捧げている情景が浮かぶ。難しい単語はないのだが訳すと曲のイメージが壊れそうで訳はつけていないが曲をよく聞いて感じ取って頂きたい。

Gospel in Rockで紹介するにあたりこの曲が収められたアルバム「ウエルカム・トゥー・ザ・リアル・ワールド」を聞きなおしてみたがNo.1となった「ブロークン・ウイングズ」をはじめとしてどの曲も十分に練られていてかつ洗練されている。駄作がないのだ。ちなみにこのアルバムも2枚のシングル同様全米No.1になっている。しかし、なぜか彼らが世間に受け入れられたのはこの「ウエルカム・トゥー・ザ・リアル・ワールド」だけで、これ以降のヒットは残念ながらない。

それにしても、こういう曲がヒットすることを思うとやはりアメリカは「キリスト教国」なのだなあと思う。日本で「南無阿弥陀仏」等を連呼したらヒットしないだろう。毎週必ず教会に行く人は30%もいないかもしれないが、米国人の宗教心は失われていない証拠といえるのでは。 今のアメリカにはこのような謙虚な気持ちが特に必要かもしれない。


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